身体の部屋
日本の伝統文化としてのナンバ
2008 年 5 月 8 日 木曜日日本人は、江戸時代まで着物を着て草履や下駄を履いて生活していた。
着物は、動きかたによってはすぐ着崩れるし、草履や下駄は踏ん張ると鼻緒がすぐ切れる。そういう装いで、様々な階級の人たちが日常生活を送っていた。そういう人々の動きを見てみると、
武 士 : 武道では素早く力強く動く
農 民 : 一日中農作業を効率的に行う
職 人 : 身体を器用に使って様々なものを創り出す
商 人 : ものの売買を行う
様々な階級の人々が、生活のなかで着物が着崩れず、履物の鼻緒が切れないような動きをしていた。そういう日本独特の日常生活から生まれてきたものが、ナンバの動きである。だから、ナンバの動きを、日本の伝統的な動きと考える。
そのナンバの動きは、300年近くにわたる江戸時代に鎖国のなか諸外国との交流を断って、諸外国の文化も品物もほとんど入ってこないところで他の独特な日本文化とともに醸成された。
そして、明治時代になり外国の文化や品物が一度に日本に流れ込んできた。当時の日本人は、急速にそして大量に西洋文化を取り入れようとした。現代でも、日本人の外国好きは変わらない。そして、西洋式の軍事訓練のなかの軍隊式の動きの導入、それに着物や草履に変わる洋服や靴への変更を急速に行った。その結果、日本の伝統文化ともいえる「ナンバ」も他の日本文化同様に姿を隠していくことになった。
我々の行っている「ナンバ」の作業は、歴史に埋もれた「ナンバ」を再現しようというものではなく、「ナンバ」を現代生活のなかでどのように活用していこうかということである。だから昔のナンバを探すのではなく、ナンバのエッセンスを探り、それをどのように現代生活の様々な分野に落とし込むかということである。
ナンバの動きの分析
人間の動きというものは、遺伝的に身についているものではない。人間でも狼に育てられれば、四脚で歩き手を使わずに食べるようになる。動物と違って人間の動きとは、学習によって身につくものである。歩くこと一つをとっても、人間は学習して身につけている。
着物を着て、草履や下駄を履いて生活していたことから、ナンバの動きが生まれてきたと考える。一日動き続けたからといって、身体を痛めたり、疲れて動けないようでは生活できない。そして、そのナンバの動きは、今のように文明社会化されていない自然の環境の中で、ほとんどを自分の身体の動きに頼っていた時代のなかで、効率的な動きになっていったと思われる。
着物と草履や下駄を身につけて行われていたナンバの動きを分析していく。
着物が着崩れないで、履物の鼻緒が切れない動きとは、身体を動かすときに出来るだけ「捻らない」「うねらない」「踏ん張らない」というような動きにたどり着いた。そのナンバの動きは、現代の様々な動きに導入しても効果的であり、効率的でもある。
「捻らない」 頭上から見て、肩のラインと腰のラインがクロスしない。
膝の向きと足先の向きが同じ方向を向いている。
「うねらない」 身体を鞭のようにしならせない。
動きのタメをつくらない。
「踏ん張らない」 動きの支点を消す。
運動感覚を変える。
そして、ナンバの動きを実際に試してみると、身体を動かすことの楽しさを感じる。身体を動かすということが、苦痛から楽しさに変われば生活は一変するし、考え方も変わる。そして、身体を動かす楽しさを知れば、そこから様々に発展さすことが出来る。
我々が考えるナンバ
我々は、ナンバを難しい場(難場)として捉えている。これは我々なりの捉え方である。
それは、自分自身が難場の場合もあるし、自分の置かれている環境や状況が難場の場合もある。いずれの場合でも、自分の身体や心にとっての難しい場面をいかに創意工夫して切り抜けていくかがナンバだと捉えている。だから、さまざま場面や分野への応用や発展が可能である。
難しい場面に遭遇したときに創意工夫して切り抜けるとは、今まで持っている常識や知識を一回切り捨てて、新しい発想が必要になる。そしてそれは、新しいことへの挑戦であるし、新しい楽しみを見つけることでもある。
我々が、現在取り組んでいるナンバ的試みは、
・ 日常生活への応用(ダイエットも含む)
日常生活で動くことを苦痛と感じないで楽しめるようにする。
歩くことをはじめ様々な動作をより効率的にと工夫する。
自分の身体を使うことの習慣化。
・ スポーツへの応用
身体の動かしかたの質を上げて、より力強くより速くを求める。
怪我や故障の少ない身体の動かしかた。
陸上競技・バスケットボール・競技ダンス
・ 仕事への応用
仕事の楽しみかたを工夫する。
結果的に仕事が出来るようになる。
身体からの発想力を生かす。
・ 楽器演奏への応用
身体を効率的に使った演奏法。
怪我や故障のない身体の使い方。
自分の演奏する音自体が変化する。
・ ナンバ式護身術
子どもでもできる簡単な受身や身の守りかた。
危険な場からの逃げかたであって、決して闘わない。
・ 民俗芸能への応用
忘れ去られた日本人の身体の使い方を思い出す。
日本人の感情を身体を使って表現する。
・ リハビリテーションへの応用
身体の機能回復にナンバ的考え方を応用。
身体の潜在的回復能力を刺激する。
・ 介護への応用(心理的)
介護場面の人間関係にナンバ的考え方を応用。
介護の心得として学ぶ姿勢など心へのアプローチ。
・ 身体から心へのカウンセリング
心の悩みを身体からのアプローチで解決する試み。
身体を動かしながらのカウンセリング。
・ 人間教育への応用
身体を動かすことで五感を刺激し感性を高める。
体験したことによる感性から理性への発展を図る。
などであり、これからも範囲が広がりそうである。
ナンバ的動き
ナンバの動きは、身体と対話しながら身体が感じる快・不快を基準にする。身体の感性である快・不快を基準にして、身体で考えるということである。
身体を動かすときに、出来るだけ「捻らない」「うねらない」「踏ん張らない」ということに気をつけながら、
・ 筋肉ではなく骨を意識しながら動かす。(折り畳む、平行四辺形に潰す)
骨を意識して動かすので、余計な筋肉を使わない。
胸郭や骨盤を平行四辺形に潰していくことで効率的に動く。
関節を上手く折り畳むようにする。
骨を意識して動いたほうが正確に動ける。
・ 全身の協調性や連動性を考える。
胸郭と骨盤を連動させて動くようにする。
身体の局部に負担がかからないように全身を使う。
・ 動きの自然さ、滑らかさを求める。
動くときに「頑張り感」を出さないようにする。(運動感覚)
身体の動きたい方向を重視して動く。
身体の捻れを抑える。
・ 動きの無理や無駄を省いていく。
動きのタメやうねりを抑える。
猛練習をして無駄な動きを取り除く。
・ 身体を器用にし、動きの精度を上げる。
身体を動かすことを負荷と考えず、解決すべき課題として捉える。
同じ動作をより効率的に出来るようにすることを目指す。
その効用としては、
・ 動くことによる気持ちよさの体験。
・ 身体から心へのよい影響。
・ エネルギーの有効利用。
・ 身体を痛めない。
・ 身体のバランスが整う。
・ 思いがけない力や速さの獲得。
・ 創造する楽しさ。
・ 発想が広がる・
・ 身体で考えることが身につく。
・ 自然体の姿勢が身につく。
ナンバ的発想
ナンバ的に発想するとは、五感をフルに活用して快・不快を感性で感じることから始める。そのために自分の身体を使って、身体で考える。
難しい場面を切り抜けていくために、身体の動かしかたを工夫する。それも、身体が快と感じる動きはどんなかと模索する。そうした体験が、ナンバ的発想の原点となる。
ナンバ的な動きの創造、ナンバ的な動きの開発、ナンバ的な動きの応用などが、発想のもととなる。机の前に座っているよりも、自分の身体を使って考えたほうが発想も豊かになる。
そのためには、難しい状況や場面から逃げないで、立ち向かっていくということである。例えば、ナンバでは、痛みをコーチにして動きを変えていく。身体や心が痛むのは、身体や心の動かしかたが悪いので、「痛み」は動かしかたを変えてほしいというメッセージとして捉える。
「痛み」とは、そこが弱いのではなく、その部分にばかり負担がかかるような使いかただと理解する。だから、痛む場所を鍛えるのではなく、痛まないような使い方を工夫するということである。
ナンバ的発想でいえば、身体や心で体験する快・不快を基準に感情や感性を育てていく。そして、その感情や感性から生まれる智恵を身につける。理性で生きていくよりも感性で生きたほうが、世の中は生きやすい。
我々が持っているプログラム
・ ナンバ式骨体操
身体と快・不快の対話を行いながら、身体のバランスを整える。
骨の平行四辺形への潰しかたを体験する。
自分の身体を知る手がかりとなる。
回数や方向を快・不快で決めるので従来の体操とは違う。
リハビリテーションの動きの基本にもなる。
・ ナンバ歩き・ナンバ走り
胸郭と骨盤を連動させながら、より効率的な歩きや走りをする。
歩くことが楽しくなり、行動範囲が広がり、積極的になる。
路面や自分の状況に応じて動きを変えていく。
歩くことや走ることが楽になるし、速くなる。
・ ナンバ的動き
今の動きを一度壊して、もう一度効率的な動きを考える。
身体と対話して動くようにする。
動きの常識に囚われない。
動きを負荷として捉えないで、解決すべき課題として捉える。
・ ナンバビクス
ナンバ的な動きを組み合わせて踊る。
動いているときも動き終わっても気持ちがいいので継続できる。
体調を整え、ダイエットにも効果的。
・ ナンバリズミック
身体のリズム感をナンバ的動きで身につける。
子どもから大人まで、すべての動きのリズムの基礎になる。
動きのリズムをコントロールできるようになる。
スポーツや音楽の基礎教育となる。
・ ナンバ式お元気体操
ナンバ的に動くことによって、楽しく愉快になってくる。
身体を動かすことの快感を知る。
身体から心への楽しさの感覚が伝えられる。
気分がよくなり、ダイエットにも効果的。
・ ナンバ遊び
ナンバ的な動きでの遊び。
子どもに、ナンバ的な動きで身体を刺激する。
動きへの挑戦、動きの達成、仲間との協調の楽しさを体験さす。
身体を動かすことの基本を身につける。
自然の環境が少なくなり遊びが減ってきたことを救うための遊び。
・ ナンバ式コーチ学
人間全体を見ての、身体と心コーチング。
心身の相関に基づいた心身コントロール。
チームや組織の運営。
努力に見合った成果を上げるために。
主な著書
「ナンバ走りを体得するためのトレーニング」DVD付 MCプレス
「仕事で遊ぶナンバ術」 ミシマ社
「ナンバの心身対話術」 MCプレス
「ナンバ式快心術」 角川Oneテーマ新書
「ナンバの身体論」 光文社新書
「ナンバ走り」 光文社新書
「ナンバ式骨体操」 光文社
「スポーツの話し」 創文企画
「癒しのジョギング」 ランナーズ社
心身技術研究所 http://www.nanba-walk.net/
