矢野先生のコラム

やっと手に入れる

2007 年 9 月 25 日 火曜日

私は、ここ5年ほど欲しくて欲しくてという物があった。それは何かというと、腕時計である。それも、ただの腕時計ではない。一番正確で自動的に時刻の合う電波時計で、尚且つ半永久的に使えるソーラ式の腕時計である。

時計のショーケースの前を通れば、欲しそうにじっと見るしかない。仕方がない、それまではまだ使える時計がわが腕に巻かれている。まだ使える腕時計を外してまで、新しい時計を持ってはいけないと思っていた。それがある朝、時計を腕にはめると文字盤が真っ白になっていた。いわゆる電池切れである。これは電池を換えるのではなく、ボツボツ新しい時計に変えてもいいですよという天の声だと思った。

しかし、そうなるとなかなか街に出る機会がないものである。しばらくは、携帯電話を時計代わりにして代用したが、どうも落ち着かない。そのうちバスケットボールの試合で、四日間ほど街を通ることになった。よし時計だと思い、帰りに店に入った。店員さんに時計を出してもらい説明を聞き、腕にもはめてみたが、すぐには買えない。初日はそんなもので家に帰り、その腕時計を自分のものにした想像で楽しむ。そして次の日、もう一度その店に行き、決心を固めてその腕時計を買った。値段は3万円以下で、そんな大げさなものではない。しかし、5年以上にわたって楽しめたことを思えば、実際には100万円くらいの価値があるかもしれないと思っている。

大体私が欲しいものというのは、たいしたことはない。しかし、すぐには手に入れない。欲しい欲しいと思っているのがいいのである。また、子どもをだめにする一番簡単な方法が、欲しいものをすぐに与えるということであるのを知っている。それなら、大人になっても、欲しいものがすぐに手に入れば、ダメになるのではないかと思っている。欲しいと思うことそれ自体は、そんなに悪いことではないと思う。悪いのは、簡単に手に入ることである。また、強引に手に入れるのも、後々良くないだろうと思う。
こういう風にすると、買い物もなかなか楽しいものである。

矢野

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