矢野先生のコラム

タイムマシーンに乗って

2008 年 11 月 10 日 月曜日

11月の頭に青森に講演会に行ってきた。主催者から飛行機がいいですか、新幹線がいいですかと聞かれたので、新幹線で行くことにした。

季節柄、紅葉前線を遡ったほうが楽しいかなと思った。飛行機での移動は、なんとも味気ない。朝、東京駅から新幹線に乗り、車窓から外を眺めながら移動していく。一時間毎に、風景が色づいていく。風景の中に、赤とか黄色が混じっていくのを見ていると、時間を先取りして未来に向かっているような気になってくる。じっと東京にいると、何日かかけて色が変わるのを新幹線に座っているだけで体験できる。

これは、まさにタイムマシーンに乗っている気分だ。近くに見える木立から遠くに見える山まで、時間とともに見事に彩が変わってくる。こういう変化に気がつかないくらい、忙しく生活していてはいけない。ただ車窓を眺めているだけで、体験できることである。これが、飛行機での移動と一番違うことだろう。そして、青森まで新幹線で四時間、飛行機でも空港に行って搭乗手続きなどのことを考えると、余り時間的に変わらないだろう。

しかし、東京から北に上がると、田んぼの多さに気がつく。日本の風景というのは、田んぼと雑木林だなあということに思い至る。東京で生活していると、つい忘れてしまいがちな大事なことを思い起こさせてくれる。日本人として守らなければならない自然というのは、田んぼと雑木林であろう。そして、田んぼも雑木林も、北に上るにしたがって装いを変えていく。それを眺めていることは、決して退屈しないしいろんなことが頭に浮かんでくる。

そんな状態で青森まで移動したから、講演で話すナンバのことを新幹線の中でまとめようと思ったが、頭は車窓の風景に占領されてナンバは蚊帳の外になってしまった。

翌日の朝、青森は冷たい雨が降っている中を新幹線に乗り、東京に向かった。今度は、新幹線というタイムマシーンで、過去へ返るようなものだ。車窓の紅葉が、だんだんと緑が多くなっていく。まさに不思議な時空を体験しながら、東京まで帰ってきた。そして、青森で新幹線に乗るときの寒さと、東京駅に降りたときの温かさのギャップに距離だけでない不思議さを感じた。

旅では、普段の生活の中では忘れたり、見落としたりしていることに気づかしてもらえる。そして、何度も乗っている新幹線を、タイムマシーンのように感じたのも初めてである。こんなことを発見して喜んでいる自分がいる。

 

11月8日 矢野

サイト検索

カスタム検索

活動履歴

関連図書&DVD購入